私の本音は、あなたの為に。
「花恋っ……」


花恋の目の前まで来てようやく走るスピードを落とした私は、花恋を見つめた。


(助けて、助けて)


今まで、助けを求めなかった私の思いに気付いてくれるように。


案の定、花恋は私の些細な変化に気が付き、


「優希、どうしたの?何かあった?」


と、鍵を振り回すのをやめ、心配そうに私の顔を覗き込んだ。



必死に笑顔を作っていた私も、もう限界で。


「花恋、もう無理っ……」


そう、涙を流しながら助けを求めた。


いつもは、無理をしてまで苦しみや悲しみを自分の中に溜め込む私。


そんな私が、自分から助けを求める事は、よほど大変な事が起こったと思ったらしい。


「優希。大変だったね、辛かったでしょ…?」


何も知らないのに、そうやって優しく声を掛けてくれる彼女が、私は大好きだ。



そんな私達の雰囲気をぶち壊したのは、またもや彼の声で。


「安藤っ!?」


3階に辿り着いたらしい彼の声は、息が切れていて。


けれど、そんなことはこの際どうでもいい。


その声を聞いただけで、私は先程の彼の心もとない言葉をありありと思い出す。


自然と、息をするのも忘れる程体が強ばった。


「あれっ、怜音じゃんー」


最初に私に会った時と同じ様に、花恋は言葉を伸ばしながらそう話し掛けた。
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