私の本音は、あなたの為に。
花恋の横顔を見ると、笑顔だった。


それ程、花恋は自分が考えた作戦が成功している事が嬉しい様で。



「でもっ…俺、安藤が居ないと戻れないんだけど…」


何かを訴えかける様な彼の必死の言葉に、私はふっと顔を上げる。


(どういう事…?)


けれど、花恋が


「ごめんね、優希は私がしばらく借りるから」


と、会話を強制終了させてドアをゆっくりと閉めた為、私は我に返った。



ドアを閉めて鍵を閉めた花恋はピアノの椅子に座り、


「ちょっと待っててね、優希…。ピアノ休まないといけないから…」


と、スマートフォンを取り出して誰かに電話をかけ始めた。


「えっ、待って花恋。ピアノ休んじゃうの?…それなら、私大丈夫だけど…」


花恋の大切なピアノのレッスンを休ませてまで、私の話に付き合わせるのは駄目だと思う。


だから、やんわりと言ってみたけれど。


「駄目、優希は全部溜め込んじゃうから!優希から私の所に来た時に、話を聞いておかないとねっ」


流石は花恋だ。


私の性格を、よく分かっている。


確かに私は、今図書室に戻ったら、次からは花恋に何も言わないようにしようと思っていた。


そんな私の次の行動がよめる花恋は、素晴らしいと思う。


「…ありがとう…」


花恋は笑って頷いたけれど、次の瞬間私に向かって“待って”のサインをしてきた。
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