私の本音は、あなたの為に。
でも、すぐに終わるよ!と花恋ははち切れんばかりの笑みを見せた。


それを見て、私も頷いた。


(私の話を聞いてくれる)


その安心感が、私の中の大半を占めていた。



「よしっ」


そして、花恋は笑いながら1人で頷き、私の方を向いた。


「それで、どうしたの、優希?」


その言葉を聞き、急に私の視界はぼやけ始めた。


花恋が電話をしている最中、全く目は潤まなかったのに。


それに、五十嵐が来ていた時は必死で涙を引っ込ませたというのに。


何とか、下唇を噛んで我慢するけれど。


まるで、私の涙はダムが決壊した直後の様に激しく溢れ出した。


「うんうん、そんなに辛かったんだね。…ほら、こっちに来て。ゆっくりでいいから話してみて」


私の様子を見た花恋の表情からは笑顔が消え、打って変わって慰める様な表情になった。


そのまま私は生徒席の椅子に座り、時折流れる涙を拭きながら先程の出来事を口にした。


花恋は何故か生徒席の机に座り、私の背中を撫でてくれていた。


「今日、いつもみたいに本を読んでたら、目の前に座ってた五十嵐に……『男っぽいね』って言われてっ…」


話し始めた私の声は、見事なまでに震えていた。


まるで、大きな地震に見舞われた時に口を開けた人の声の様だ。


けれど、それ程私が辛い思いをした事が分かっている花恋は笑わない。
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