私の本音は、あなたの為に。
「優希が皆と違う所は、それだけ。優希は、学校では安心して女子になってもいいんだよ」


「うん…」


私はゆっくりと頷いた。


そして、花恋はゆっくりと私に尋ねる。


「優希………お母さんには、もう言わないの?」


「ん、何を?」


花恋のお陰で、ほとんど泣き止んだ私は首を傾げた。


そんな私を見て、花恋は言いにくそうにしながらも口を開く。


「その……優希がお兄ちゃんじゃないって」


私の顔が瞬時に暗くなった事に気が付いた花恋は、慌てて言い訳を並べ立てる。


「あの、優希を傷つけようとかそういう訳じゃなくてねっ、ほら、優希がこんなに悩んでるから、一応聞いてみただけなの!一応!」


それを聞いた私は、また何かを言おうとする花恋の口を手で制した。


「うん…。花恋の気持ちは分かるよ。私がいけない事をしてるっていう事も。でも」


私は笑って花恋を見た。


(私を助けてくれて、ありがとう。でもね、これだけはまだ出来ないんだ)


中学の頃から悩み続けているけれど、これだけはまだ決心がつかない。


それ程、それは重大な決断で、私が弱いという事で。


「もう後戻りは出来ないし…。よっぽどの事がない限り、ママに本当の事を言おうとは思わない」


「でも、何で…」


花恋の言葉は、音楽室に置かれたピアノに吸い込まれる様にして消える。
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