私の本音は、あなたの為に。
“でも、それじゃあ苦しむだけだよ”


花恋がそうやって言いたいのが、これでもかという程伝わってくるけれど。


「ごめんね、花恋…。私も、分かってるんだけど…でも、ママの笑顔を見ていたいから」



それは、私が男になりきったあの日から変わらない理由。


私が“勇也”では無いと知ったら、ママは私に向かって笑ってくれないかもしれない。


もしかしたら、ママの記憶の中にはもう“優希”は存在していないのかもしれない。


そう思うと、私が演技をする事が最善の策だと思ってしまうから。


それに、今私の正体を伝えたら、今までの私の苦労は水の泡になってしまう。


せめて、最後まで悔いの残らない様に演技をしたいのだ。


そう伝えると、花恋は私を抱き締めた。


「優希がそう言うなら、無理に言わないけど……。でも、ストレスを溜め込まないでね」



数年前から、ずっとその言葉で私を応援してきてくれた彼女。


高校生になっても勇気が出ず、ずっと立ち往生している私を励ましてくれて。


そんな花恋は、もう高校生なんだし、とよく分からない付け足しをしてけらけらと笑っている。


花恋は、たまによく分からない発言をするけれど。


それでも、私の事は私よりも良く分かってくれていると思う。
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