私の本音は、あなたの為に。
というより、今までと同じ様に接せる自信がなかった。


五十嵐に、あんな事を言われた直後だ。


きちんと五十嵐の言い分に耳を傾けなかった私も悪いけれど、五十嵐は私の触れてはいけない部分に触れた。


それも、何度も何度も。


これで私が普通に五十嵐と接する事が出来たら、ある意味凄い事だと思う。


もちろん、少し時間を置けば大丈夫だろうけれど、今すぐには無理だ。



「優希、図書室閉まったらやばいから、図書室行ってきなよ!……あっ」


花恋は、言いながら私の考えている事に気が付いて口をつぐんだ。


「…そうだよね、行きづらいよね…」


「うん……ごめんね」


“花恋、ついて来てくれない?”


だから、そう言おうとした時。


「分かった、私が行く!」


花恋は、そう宣言して勢い良く立ち上がった。


「えっ?」


突然の出来事に、私は目を丸くするばかり。


何故なら、私が行くはずだから。


「だって、優希がまた逃げて来たらあれじゃん?それなら、私が行ったほうが良くない?」


花恋の説明は、私を黙らせるのにぴったりで。


確かにそうだ。


怖くなった私が逃げて帰ってくる可能性だって、十分にあるわけで。


「じゃあ、そういう事で」


そう言ってドアを開けた花恋に向かって、私は急いで声をかける。
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