私の本音は、あなたの為に。
「あのさっ」


「ん?」


長い髪の毛を揺らし、花恋が振り返った。


「五十嵐が居たら……もう、男っぽいって言わないでって、言ってくれないかな?」


私は強い眼差しで花恋を見る。


「あぁ…、五十嵐ならもう十分反省してると思うけど、優希が言うなら…分かったよ」


花恋は少し考える様な素振りを見せた後、笑って頷いた。


「じゃあ、音楽室で待っていて。私が話してくるから」


私に向かって頷いてその言葉を残した花恋は、風の様に消えていった。


閉まったドアの向こう側で、花恋の歩く音が聞こえてくる。


残された私は、口を開けて固まっていて。


行動の早い彼女。


そんな彼女の早過ぎる行動には、私の心もついて行かなかった。


(花恋……)


私の代わりにリュックを取りに行ってくれるのは嬉しい。


確かに、今の私が五十嵐に会ったらどうなってしまうのだろうか。


普段の対応が出来ない事は、明らかだ。


けれど。


(でも、私のリュックだし……)


さすがに、全てを花恋に任せる訳にはいかないから。


(図書室の鍵、閉まってたら大変だもんね)


花恋の後を追いかける理由を素早く考えた私は、すぐに花恋の後を追いかけて行った。
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