私の本音は、あなたの為に。
タンタンタン……


花恋の階段を下りる音に合わせ、私も階段を下りていく。


「あ、怜音……」


急に、花恋の少し驚いた独り言が聞こえてきた。


途端に、私の体が強ばる。


私は、階段を下りる途中で足を止めた。


花恋には、


『音楽室で待っていて。私が話してくるから』


と言われたけれど、やはりこれは私の問題。


けれど、あれ程までに“音楽室に居てね”と念を押されたから、花恋に気付かれたら何を言われるか分からない。


五十嵐の姿が見えなくても、それでも怖い。


階段を下りたそのすぐ先に花恋が居ると分かっていても、先程よりも安心感は薄れている。


けれど、せめて物陰に隠れてでも2人の会話の内容を聞きたかった。


何度も言うようだけれど、これは私の問題だから。



「怜音、何やってるの…?」


訝しげに尋ねる、花恋の声が聞こえる。


私は1段ずつ、気付かれないように階段を下りていった。


「安、藤…じゃなくて、宮園か…」


五十嵐の明るい声が聞こえたかと思ったら、すぐに落胆した声に変わった。


「何、私じゃ悪かったの?」


直後に、花恋の笑いの含んだ声が聞こえる。


階段を下りきった私は、壁に張り付く様にして2人の会話に耳を澄ます。
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