私の本音は、あなたの為に。

不思議そうにそう言う五十嵐の声が聞こえた。


それもそのはず、五十嵐は私がその言葉を聞き続けたらどうなるのか知らないのだから。


｢…とにかく、言わないであげて｣


ため息をついた花恋は、強制的に会話を終わらせようとした。


｢だから、安藤は別に平気そうだったけど？…謝るから、安藤に会わせてよ｣


五十嵐の声に、少しだけ力がこもっていて。


｢分かったけど、それは無理｣


らちのあかない会話に、花恋も段々と嫌気がさしてきたようで。


彼女がそう思ってしまうのも仕方が無いだろう。


五十嵐が、ただ


『ごめんね、分かったよ』


そう言えばいいだけなのだから。


｢何で？…てか、どうして宮園が此処に来たの？｣


五十嵐が、語尾を強めて問いている。


｢あっ、忘れてた！…優希のリュックを取りに来たんだけど、図書室は空いてる？｣


花恋が、乾いた笑い声を上げている。


そして、誰かの足音が聞こえた直後、


｢だから、安藤は？何で安藤は自分のリュックを取りに来ないんだよ？｣


誰かの－五十嵐だろう－の足音と、


｢じゃあ、何で五十嵐は此処に居るの！？係なら、図書室に居るんじゃなくて？｣


と、勢い良く反論する花恋の声が聞こえた。


｢っ…｣


瞬間、五十嵐の息を飲む音が聞こえた。