私の本音は、あなたの為に。
「ですよねー」


大ちゃんも、私の喋り方を真似して敬語を使った。


「じゃあ、何で行かなかったの?サボり?」


「サボりじゃっ……」


私は、そこで言い淀む。


「……サボり、なのかな」


独り言の様に呟いたその言葉を、嫌な事に大ちゃんは聞き逃さなかった。


「今、何て?優希ちゃんがサボりぃー?」


いたずらっ子の様に笑う大ちゃんを、私は直視出来なかった。


「…一緒に委員会の係をやっている男子が嫌だから休んでるって、サボりなのかな…?」


そっと声に出しながら、


(ごめんね、五十嵐)


と、心の中で謝る。


「どういう事?何があったの?」


大ちゃんは、心配そうに小首を傾げながら私の顔を覗き込んでくる。


(大ちゃんに相談するのは、これで最後にしよう)


私はそう決め、今までの五十嵐とのトラブルをゆっくりと説明した。


「同じ委員会の男子が…五十嵐っていうんだけどね、その男子が…私の事を、男っぽいって言ってきたんだ」


私は、無理矢理口角を上げて話を進める。


そうでもしていないと、私の口角は下がるだけでは済まないと分かっていたから。


「いや、私が男っぽいっていう事は分かっているんだよ?」


(現に、お兄ちゃんになりきってるしね)


心の中で、私はそう突っ込みを入れる。
< 151 / 309 >

この作品をシェア

pagetop