私の本音は、あなたの為に。
「大ちゃん、自分も男子なのにっ…」


思わず、私も笑いが込み上げてくる。


「俺、男子だから良く分かるんだよ」


大ちゃんは、得意気にそう言った後にまた吹き出した。



それから数十秒後、笑いの収まった大ちゃんは笑い疲れて息を切らせながら話を元に戻した。


「あぁ、めっちゃ笑った……だから、優希ちゃん、ちゃんと委員会の係に出て、その五十嵐君って子に言うんだよ?」


「……うん…」


私は、聞こえるか聞こえないかの小声で返事をする。


「でも、五十嵐には…私が男になってるって、言えないな……」


「それは、優希ちゃんの決断次第だよ」


大ちゃんは、全てを優しく包み込む様な笑顔を見せてきた。


「言いたくなったら言えばいいし、言えないなら言わなくても大丈夫」


彼の優しい言葉に、胸が熱くなる。


「でも、その子…五十嵐君?は、きっと優希ちゃんの事を分かってくれると思うよ」


直感だから、信用しなくてもいいからね!、と念を押す大ちゃん。


けれど、私にはそれが本当の事のように思えて仕方がなかった。



その頃には、もう私の家が近づいてきていて。


「あっ、もう家に着いちゃったね」


大ちゃんは、自分を照らす太陽に向かって眩しそうに目を細め、真上の私のマンションを仰ぎ見た。
< 153 / 309 >

この作品をシェア

pagetop