私の本音は、あなたの為に。
「『サッカーは続けられなくなったけれど、前よりは右半身を動かせられるようになったんです。それなのにっ…』って、遊大君、泣きそうだったのよ」


「大ちゃんが……」


私は口を開けたまま、身動きが取れなかった。


鏡に映る私の顔が、妙に間抜けに見えて仕方がなくて。


大ちゃんは、私と一緒に帰っている間、1度もそんな事を口にしなかった。


そんな素振りも、しなかった。


「遊大君、勇也の前では元気になったって嘘をつくって言っていたのよ。…勇也が家に帰ってきたら、本当の事を伝えて欲しいって」


「そんな……」


もう、目の前が真っ暗になる思いだった。


大ちゃんがついたその嘘は、優しい嘘ではない。


人を悲しくさせる、嘘だ。


「遊大君、今日か明日にまたアメリカに戻るって言ってたわよ」


唐突に言われたその言葉に、私の頭の中が真っ白になる。


「えっ!?」


「本当に早く手術をしないといけないらしいわ。…今回のリハビリは、前回のリハビリよりも過酷だって…」


彼、1人で抱え込んできたのね…。


そう言うママの声が、左耳から右耳へとすり抜けていく。



(そういえば、大ちゃんは辛そうにしていた!)


今更思い出す、今日の帰り道。


坂道を登る時も、辛そうに顔を顰めていた。


あれは、歩く度に右肩に来る振動が酷かったからではないだろうか。
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