私の本音は、あなたの為に。
私の為に、自分の病状を隠してまでアドバイスをくれた大ちゃん。


その事を知ってしまった私は、また改めてお礼を言わなければいけない。



プルルルルルル……プルルルルルル……


聞き慣れた呼び出し音が鳴る中、私は緊張のせいで高鳴る心臓を鎮めていた。


(大ちゃん、早く出て)


ママが洗面所から出てくる時間までが、私の勝負の時だ。


何故なら、私は今、家の中で“優希”になろうとしているのだから。


メールならまだしも、電話となるとママに口調が違う事に気付かれてしまう。


だから。


(大ちゃん、お願いだから早くっ!)


私はスマートフォンを片耳に押し付けた。



『……もしもし?』


そして、大ちゃんの声が聞こえてきた。


「大ちゃん!?」


大きな声を出してしまった私は、ママに気付かれないように小声でもう一度彼の名を繰り返した。


『ん?優希ちゃん、どうしたの?』


何も知らない大ちゃんは、無邪気にそう尋ねてくるけれど。


「大ちゃん、今日は本当にありがとう」


私は、知ってしまった。


『急にどうしたの?さっきもお礼言われたよ?』


大ちゃんは、笑いを含んだ声で私に話し掛ける。


「……大ちゃん、もうアメリカに行くの?」


そんな彼の質問には私は答えず、いきなり本題に入った。
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