私の本音は、あなたの為に。
『っ……!?』


電話の向こうで、大ちゃんが息を飲むのが分かった。


『…何でそんな事聞くの?俺、もう戻って…』


「大ちゃん、嘘つくの下手だよ」


今度は、私の声が笑いを含む番だった。


嘘をつく事なら、私の方が上手に決まっている。


「大ちゃん、また行くんでしょう?…手術を受ける為に」


大ちゃんからは、何も返答が無かった。


ただ、少し乱れた息遣いだけが聞こえてくるだけで。


大ちゃんから何の返答が無くても、彼が私の話を聞いている事は明らかだから。


私は、構わずに話し続ける。


「大ちゃん、私の為に嘘をついてくれたんだね…」


『……』


「でも、私は大丈夫だよ」


私は、わざと明るく話しかける。


私のこの先の未来に、希望は無いはずなのに。


「ちゃんと委員会にも行って、友達とも仲直りするから」


本当に委員会に行く勇気が出なくても、それを言う事で大ちゃんを安心させる為に。


「だからね、大ちゃん…」


『嘘、じゃないよね?』


急に、電話口からゆっくりとした声が流れ込んできた。


その声は、電話を通じて私の鼓膜を震わせ、何度も脳内にこだまする。
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