私の本音は、あなたの為に。
大ちゃんが何かを言いかけたその途端、


『うっ…!』


何かを堪える様な声と共に、


ドンッ……


何かが倒れる音、続いて


バンッ……


何か-スマートフォンだろう-が落ちる音がした。


「えっ!?ちょっと、何?」


電話口から聞こえてきた音に対し、私はおろおろするばかり。


何も見えないこの状況で頼りになるのは、相手の声だけなのに。


大ちゃんの声が、聞こえない。


『…大丈夫ですか!?』


『どうしましたか?…大丈夫ですか?』


ただ、大ちゃんのものではない何人もの他の人の声が流れ込んできた。


(えっ…!?)


その声を聞き、私は瞬時に察する。


(大ちゃんが、倒れたんだ!)


「大ちゃん!?大丈夫?何があったの!?」


私も、彼に向かって必死で呼び掛け続ける。


『っ……』


けれど、聞こえてくる声は大ちゃんの辛そうな呻き声。


『大丈夫ですか?どこが痛いん……』


『っ!!痛いっ!!…触ら……ないでっ…』


誰か分からない男性の焦った様な声が聞こえた後、私が今まで聞いた事がない大ちゃんの声が聞こえてきた。


それは、聞いているだけで泣いてしまいそうな程悲痛な声で。


「大ちゃん!?返事してっ!」
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