私の本音は、あなたの為に。
大ちゃん達の会話が鮮明に聞こえる事から、きっと大ちゃんのスマートフォンは彼の近くに落ちたのだろう。


「大ちゃん…大丈夫なの?」


向こうから何の応答もなく、どんどん弱まる私の声。



「勇也、何があったの?もう少し静かに話して。近所迷惑になるわ」


許可も無く私の部屋のドアを開けたママにはそう言われ、


『大丈夫ですか?今救急車を呼びましたからね。どこが痛いですか?』


電話口からは、知らない人々の声ばかりが流れ込んでくる。


「っ…母さん、ごめん。静かにするから」


私は必死に兄を装ってママを私の部屋から追い出し、通話をスピーカーフォンに変えた。


「…大ちゃん、大丈夫?…私のせいなの?」


誰が私の呼び掛けを聞いているか分からない。


もしかしたら、誰の耳にも届いていないかもしれない。


けれど、私は話し続ける。


もちろん、ママには聞こえない様に気を使って。


「大ちゃんが私に会いに来なかったら、大ちゃんはもっと早くにアメリカに戻れたんだよ…」


(大ちゃん、私なんかより自分の身体を優先して)


「どうして、会いに来たの…?私は嬉しかったけど、大ちゃんが倒れるのは嬉しくなんかないよ…」


(私が会話を長引かせたのがいけなかったんだね、ごめんなさい)
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