私の本音は、あなたの為に。
「うん。ほら、俺目が悪いじゃん?大きめの方がいいから」


「あっ…そう」


何となく変な感じはしたけれど、五十嵐の頼みなのだから仕方が無い。


私は、五十嵐の読みたい本のコーナーを必死に探した。



(ここかな…?)


(違う、きっとここだ)


そんな自問自答を繰り返し、私はようやく幼児向けの様な薄い本を発見した。


「あった!五十嵐、あったよ!どれが良い?」


まるで自分の事の様に興奮する私。


「本当?ありがとう!で、何処何処?ってか、俺が読みたい本決めるのか」


五十嵐はころころと喜怒哀楽を表現しながら、私の元へ来ようとした。


その時だった。


「…!」


私が居る場所の本棚を覗き込む直前、五十嵐が急に踏み止まった。


「?」


(何やってるの?)


私は、おいでおいでと手招きをする。


「…ちょっと待って」


五十嵐は、目を瞑って大きく深呼吸をした。


そして、目を瞑ったまま勢い良くこちらに向かって駆けてきた。


「わっ!」


五十嵐がそう来ると思っていなかった私は、すんでの所で本棚にへばりついた。


そのまま本棚と一体化していると、五十嵐はピンポイントで私の目の前で止まった。
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