私の本音は、あなたの為に。
私は、また椅子に座って本を開く。


「…お、婆さ、んは…えーっ……大きな、も、も…桃をい、家に、持ち帰り……まし、た」



あれ程までに苦痛を感じていた図書委員の係は、瞬く間に過ぎ去って行った。




それから、ほぼ毎回の委員会の係の時間は、私と五十嵐の本を読む時間になった。


とは言っても、私はほとんど読書に集中は出来なくて。


ずっと彼の本の音読を聞いて、字が読めなくて五十嵐の声が詰まったら、私が後ろに立って教える。


五十嵐にしてみたら地道な努力で、私にしてみたらいつでも止めれる事。


けれど、不思議な事にそれがつまらないと感じた事は1度も無かった。


それで五十嵐が少しでも字を読めるようになって欲しかったし、目が悪くても字はきちんと読める事を分からせてあげたかった。



そんな事が何度が続いた、数週間後の水曜日の放課後。


もう期末テストも終わり、全ての教科が帰ってきた。


私は家で迫真の演技を続けている事もあり、点数はこの前と同じく過去最高点。


そして、五十嵐が別室でテストを受けている事もこの前と同じだった。



「ねえ安藤!期末テスト終わったよ!?俺どうしよう、嬉し過ぎて発狂しそう」


物凄い勢いで図書室のドアを開けた五十嵐は、大声で第一声を発した。
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