私の本音は、あなたの為に。
スマートフォンでママとメールをしていた私は顔を上げ、微笑む。


「そうだね。私も嬉しい!…でも、発狂はしないで」


苦笑しながらそう言った私は、


『今日も委員会あるから』


と、ママにメールを送信した。


この頃のママの仕事は、帰りが遅くなる日とそうではない日が不定期になっていた。


だから、ママはいつもにも増して私の委員会の有無を尋ねる様になった。


ママが、私の帰りに合わせて帰って来れる様にだ。



「今日、眼鏡持ってきたよ!」


五十嵐は、いつもの様に私の前の席に座りながら、嬉しそうにそう報告した。


「本当に?なら、今日は沢山本を読もう!私、五十嵐の為に沢山本持ってきてあげるよ」


「気持ちだけ、ありがたく受け取ります」


五十嵐は、白い歯を見せてにっこりと笑った。


「この前の“桃太郎”の続きが良いからさ、安藤持ってきてー?」



この頃の五十嵐は、自分から本棚の方へ行こうとすることが少なくなった。


私達がぎくしゃくした雰囲気になる少し前までは、私が本を選ぶ時には後ろからついてきていたり、五十嵐が1人で本棚の周りをうろつくこともあった。


けれど、今の五十嵐はあからさまに本棚を避けていた。
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