私の本音は、あなたの為に。
チームの中でもサッカーが上手だった兄は、当然の様にFWのポジションに付いていた。



本当は、もっと兄のプレーを見ていたかった。


勇也が出る試合は必ずママと見に行っていたし、誰よりも大きな声で声援を送った。


試合で負けた時は私も泣きながら励まし、勝った時は私も嬉し涙を零しながら勝利を喜んだ。


勇也のシュート力は、初心者の私でも分かる程素晴らしいものだった。


勇也が得意とするシュートは、“無回転シュート”だった。


最後の最後の、必殺技。


他のメンバーがどれ程頑張っても点を入れられない時や、何度も相手チームに点を入れられた時。


勇也は、いつも“無回転シュート”で相手を圧倒させた。



『いくぞー!』


その言葉が、“無回転シュートをする”という私達への合図で。


蹴られたボールは、いつもスピードが速過ぎて辛うじて見えるか見えないかの瀬戸際。


相手のゴールキーパーが手を伸ばしても、もう遅い。


巨人の様に立ち並んで、行く手を阻もうとする相手をすり抜けたボールは、あっという間にゴールに入ってしまう。


その技が、勇也の最大の武器。


私達は、そのシュートを見ると毎回興奮していた。


『ママ、見た!?お兄ちゃんのシュート!』


『もちろん!勇也、凄いわね!』
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