私の本音は、あなたの為に。
上階からは、花恋のピアノの音が微かに聞こえてきた。
「……そ、して…?ある、日、えーっと……ももた、ろう…桃太郎、が言い、…ま、し、た」
「うん」
私は、五十嵐に向かって相槌を打つ。
眼鏡のガラス越しに、彼は私に向かって微笑んでみせた。
「僕……、お、にか?し、…あっ、鬼ヶ島!…に行って、わ、…わ、わる…い、鬼…を………安藤、ヘルプ」
沈黙の後に五十嵐が顔を上げ、苦笑しながら私を呼んだ。
「はいはい」
私はすかさず立ち上がり、五十嵐の後ろから本を覗き込んだ。
「ここが分からないの?」
私は、桃太郎の台詞の部分を指差す。
「そう」
「『僕、鬼ヶ島に行って悪い鬼を退治します』だよ」
「これ、“退治”?」
五十嵐は、私の声を聞いた後に桃太郎の中の“鬼を”という部分を指して聞いてきた。
「ううん。それは、“鬼を”。“退治”は、その次。…ほら、ここに書いてあるでしょ?」
私は、いつかと同じ様に五十嵐の肩から顔を出して、桃太郎の台詞を指でなぞった。
「これ、“退治”…?」
不思議そうに独り言を呟く五十嵐。
どうやら、その平仮名が“退治”と読む事に納得が出来ていないようだった。
本当なら、
(五十嵐、小学生からやり直せば?)
と呆れたい所。
「……そ、して…?ある、日、えーっと……ももた、ろう…桃太郎、が言い、…ま、し、た」
「うん」
私は、五十嵐に向かって相槌を打つ。
眼鏡のガラス越しに、彼は私に向かって微笑んでみせた。
「僕……、お、にか?し、…あっ、鬼ヶ島!…に行って、わ、…わ、わる…い、鬼…を………安藤、ヘルプ」
沈黙の後に五十嵐が顔を上げ、苦笑しながら私を呼んだ。
「はいはい」
私はすかさず立ち上がり、五十嵐の後ろから本を覗き込んだ。
「ここが分からないの?」
私は、桃太郎の台詞の部分を指差す。
「そう」
「『僕、鬼ヶ島に行って悪い鬼を退治します』だよ」
「これ、“退治”?」
五十嵐は、私の声を聞いた後に桃太郎の中の“鬼を”という部分を指して聞いてきた。
「ううん。それは、“鬼を”。“退治”は、その次。…ほら、ここに書いてあるでしょ?」
私は、いつかと同じ様に五十嵐の肩から顔を出して、桃太郎の台詞を指でなぞった。
「これ、“退治”…?」
不思議そうに独り言を呟く五十嵐。
どうやら、その平仮名が“退治”と読む事に納得が出来ていないようだった。
本当なら、
(五十嵐、小学生からやり直せば?)
と呆れたい所。