私の本音は、あなたの為に。
(カウンター席に居たんじゃないの?)


私の疑問は、胸の中に留まる。


「何これ…『サッカーについて 分かりやすく』……」


大きく書かれた題名をゆっくりと口に出して言った五十嵐は、小首を傾げた。


「安藤、サッカー好きなの?」


「あっ、いや…まあ。興味があるっていうか…」


しどろもどろになって言い訳をする私。


「ふーん…」


五十嵐は私の向かい側の椅子に座り、私が読んでいたその本を読み始めた。


「サッカー、凄いね。…世界で、最も……人、気の…ある……スポーツ、なんだ」


五十嵐は本を何度か自分の顔の近くまで近づけ、ゆっくりと一文を読んだ。


「うん。…五十嵐、目が悪いの?」


目を細めたり、何度か瞬きをしている五十嵐は、目が悪そうだった。


「あっ……そんな感じ」


字が小さいからね、と五十嵐は笑った。


私はそんな五十嵐に少しの違和感を覚える。


(五十嵐が読んでいた文、そんなに字が小さかったかな…)


けれど、目の悪さは人それぞれ。


眼鏡をしていないだけで、本当はコンタクトなのかもしれない。


私はそれ以上深くは聞かなかった。



「えーっと……なるほど、11人なんだ…うんうん……」


五十嵐は再び集中して本を読み始めた。


目が悪いのなら今は本を読まなくてもいいと思うけれど、五十嵐はかなり真剣な表情で文に目を通していて。
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