私の本音は、あなたの為に。
“人前では、自分の記憶障害の事を隠してきた遥。けれど、ひょんな事から舞の目の前で記憶を無くしてしまい…?”


(……)


何だか、何かと似ている気がする。


特に、“記憶障害”という辺りが。



“何とかして遥の『大切な人』になりたい舞と、自分の病気を理由に彼女を避ける遥。

2人の淡いじれ恋が、今、始まる…!”



(嘘でしょ、ママ…?)


親の趣味に引いている訳では無い。


私は、この映画を観る事によって母親の記憶が戻るかもしれない事を恐れているのだ。


確かに、彼女には自分が“優希”の事を忘れているという自覚も無い。


それに加えて、私が“勇也”の振りをしている事にも未だに気付いていない。


もし、この映画で母の記憶が戻ったとしたら。


私は、震える体を抑えるのに精一杯だった。


(ママが、私の事を思い出してくれるかも…!)


それは、嬉しさから。


(でも、お兄ちゃんが居なくて、前みたいにずっと悲しむかも…)


それは、不安から。


とにかく、色々な感情が私の心に入り混じっていた。



(でも、)


私は、顔を上げた。


目の前には、私の返事を待つママの顔がある。


(ママに変化が無くても…私が見てみたい)
< 211 / 309 >

この作品をシェア

pagetop