私の本音は、あなたの為に。
何とも興味をそそる題名を見たら、この映画を観ないなんて手段は選べなくて。


「母さん、見に行こう。俺も見たい」


私は、にっこりと笑ってそう告げた。


「良かった!じゃあ、明日見に行きましょ!…確か、時間は……。13:30からのが1番良いわね、それにしましょ」


「うん、時間と席は任せるよ」


ママは、早くもスマートフォンで映画の予約を始めていた。


「席は…後ろの方の、真ん中らへんが良いかしらね!…Kの、12,13で良いわね…」


ママは、画面を驚く程の速さでスクロールしながら瞬く間に予約を済ませて行った。


「映画館は、此処からすぐ近くのショッピングモールの所で良いかしら?」


「え?…ああ、うん」


急にママがこちらを向いてきたので、驚いた私は一瞬“優希”になりかけた。


けれど、ママはそれに気付かなかった様で。


鼻歌を歌いながらスマートフォンの画面を見ているママを見て、私はそっと胸を撫で下ろした。



それから数時間後。


映画の件も一段落つき、夕飯を食べ終えてお風呂に入った私は、髪の毛をタオルで拭きながら自分の部屋のベッドに横になっていた。


「疲れたー」


天井を仰ぎ見ながらふっと息をつき、目を瞑る。


今日は、とにかく色々な事があった気がする。
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