私の本音は、あなたの為に。
急に五十嵐が私を探し始め、恐怖の余りに泣き出したり、抱き締められたり。


ママに、急に映画に誘われたり。


そのママは、今は長い入浴中だ。


(五十嵐…あんな風になるなんて、意外だったな)


私は、ごろんと体の向きを変えた。


五十嵐に抱き締められている間、私は不思議と抵抗を感じなかった。


普通なら、男子から抱き締められたら突き飛ばしそうなものなのに。


(じゃあ何で、私は平気だったの?)


むしろ、ずっとこのままで良いとさえ思った。


五十嵐が楽になるのなら、いつまでもこの体制でいいと思った。


私も、人の温もりを感じられて嬉しかった。


私の素顔を何も知らなくて、慰めでも何でも無く、ただ率直に。


(え、何この気持ち…?私、どうしちゃったの?)


そこまで考えて、私ははっと我に返った。


私が、こんな感情を持つだなんて。


しかも、いつもは男になっている、この私が。


(…私、どうしちゃったんだろう?)


五十嵐の事を考えると、胸が締め付けられる気がする。


しかも、頬が火照っている気も。


それが、良い意味なのか悪い意味なのか分からないけれど。



(うーん…?)


タオルを顔に乗せてしばらくくつろいでいると。
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