私の本音は、あなたの為に。
その時。


「…安藤」


ガタリと音がしたかと思うと、目の前に座っていた五十嵐が立ち上がってこちらを見ていた。


「えっ?…何?」


私の問いに答えず、彼はそのままこちらに向かって歩いてきた。


(?)


そんな私の目の前に立った彼。


「えっ?」


何も分からない私が、思わず立ちあがると。




「……お疲れ様」




今までに感じた事の無い、温かなぬくもりに包まれた。


「………え?」


(何……今、何が…?)


この期に及んで、全く状況把握が出来ていない私。


ただ分かることは、私の背中に誰かの腕が回されている事。


(……えっ!?待って、私は今、ハグされてるの?)


そのぬくもりを感じて数秒後、ようやく状況把握が出来た私。


「五十嵐?どうしたの?えっ?てか、離して…?」


私が先週彼にハグをした時と、今の状況は訳が違う。


(だってあの時は、五十嵐が泣いてたから…理由は分からなくても、少しでいいから寄り添いたくて…!)


頭の中で、必死に意味の分からない言い訳を考えていると。


「安藤、……本当にお疲れ様。頑張ったね」


温かな彼の声が、私の脳内に響いてきた。


「1人で、辛かったよね……ずっと近くに居たのに、寄り添えなくてごめんね」


「あっ……」
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