私の本音は、あなたの為に。
「…優希、凄いよ!」


約30秒、たっぷりと沈黙が続いた後、大きく息を吸う音が聞こえ、花恋は電話口越しに大声でそう言った。


「うおっ!?……花恋、静かにして、今鼓膜が…」


半分叫びとも取れるその声に、私は一瞬たじろぐ。


「あっ、ごめん。でも凄い!…あの優希に好きな人が出来たなんて。優希はやっぱり女子だよ!」


さらりと私の性別に対する肯定的な言葉を言える所も、花恋の素晴らしいところだと思う。


「…ありがと、花恋」


すると。


「で?告白、OKしたの!?どうなのよ優希!」


やはり、彼女は乙女だった。


「…うん、良いよって言ったよ」


すると、


「うわああっ!優希と怜音かあ…。よくよく考えたら、お似合いかも…」


と、電話口越しに感嘆のため息が聞こえてきた。


「ふふっ、ありがとう」


「本当に凄いんだけど、優希。羨ましいー!」


花恋は、未だに明るい声で私よりも嬉しさを表現していたけれど。


『花恋ー、ちょっと来てー』


電話口から、微かに花恋の母親が彼女を呼ぶ声がした。


「はーい、今行くー!…ごめんね優希、呼ばれちゃった。また明日ね。じゃあね、おやすみ」


「あっ、うん!じゃあね、…おやすみ」


電話を切った後の私の表情は、久しぶりに爽やかだった気がする。


その証拠に、私はその夜、夢を見ない程ぐっすり眠ることが出来た。
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