私の本音は、あなたの為に。
五十嵐はまた教科書に目をやったけれど、パラパラとページをめくるだけで、読もうとはしない。


「28ページの、文法の所だよ」


小声でそう教えると、


「ありがとう」


と五十嵐は目を上げ、微笑んだ。



けれど。


そのページが何処なのか、上手く見つからないようで。


「…あれっ…?」


私がじっと見ている事に気付いている五十嵐は、次第に焦り始めた。


20ページ台をめくっているけれど、一向に目指すページに辿り着かない。


いや、28ページには1度辿り着いている。


それなのに、彼はその事に気が付かなかった様だった。


目を擦ったり、瞬きをしている彼の姿を見ていたたまれなくなった私は、


「ここだよ」


と、五十嵐の教科書のページをめくって指を指した。


「…ありがとう」


彼の声は先程とは違い、少しだけ元気が無いように聞こえた。


自分で見つけられなかったからだろうか。


(でも、目が悪いんだから仕方が無いよね…)


どちらにせよ、彼の目の悪さは今日の視力検査で分かる。


五十嵐が教科書を食い入るように見ている姿を見ながら、私はまたペンを手に取った。
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