私の本音は、あなたの為に。

｢安藤。……ずっと騙してて、ごめんね｣


そして、目を開けた彼が言い放った言葉は、謝罪の言葉だった。


｢っ……？｣


(何言ってるの？)


よく分からず、戸惑う私。


そんな私を見て五十嵐は下唇を噛み、もう1度口を開いた。


｢…俺、本当は、字が読めないんだ｣


(それなら、私も知ってる)


五十嵐が字を読むのが苦手だから、私達は係の仕事の時間を割いて本を読んでいたのではなかったのか。


｢えっ、それは知ってるよ？だから私達、本を読む練習を…｣


｢違う、そうじゃなくて｣


その事を彼に言うと五十嵐は首を振り、すぐ様否定してきた。


｢そういうのじゃなくて、本当に。字を“読む”って事が、俺にとったら物凄く難しい事なんだ｣


良く、分からない。


(だって、五十嵐が字が読めないから、私達は……)


｢っ、五十嵐、何言って……｣


私は即座に反論しようとしたけれど。




｢本当だよ。俺ね、ディスレクシアっていう障害があるんだ｣


(障害？)


五十嵐の言葉の方が、先だった。


｢ディスク……？｣


何それ、初めて聞いた、と首を捻る私に、


｢違う、ディスレクシア。…読字障害っていう意味｣


私の目だけを見て、分かりやすく説明してくれる五十嵐。