私の本音は、あなたの為に。
ずっと五十嵐の目を見ていた私だけれど。


この時ばかりは、驚きが大きすぎて目を逸らしてしまった。


「ディス、レクシア…読字障害…待って五十嵐、それって、五十嵐が…嘘でしょ?」


(読字障害?何それ?…読字障害って、読む字の障害って書くんだよね?…つまり、五十嵐が障害者って事?)


けれど、簡単に“障害って?五十嵐、どういう事?”とは聞きづらくて。


目を逸らしたまま言葉に詰まった私に、五十嵐は、


「大丈夫だよ、俺の事をけなしても。…皆、そうだったから」


そう、意味深な言葉を紡いだ。


「えっ…?」


また私が彼の方を向くと、五十嵐は未だに私の目の奥だけを見詰めながら自虐的に微笑んでいた。


「俺ね…物心ついた時から、字が読めなかったんだ」



五十嵐の言っていた読字障害-まとめると学習障害-には、様々な種類があると、私は後から知った。


算数や数学等で、主に数字の計算をする時に困難が生じる、算数障害-ディスカリキュア-。


字を読めるのに、書く事に困難が生じる、書字表出障害-ディスグラフィア-。


そして、字を読む事に困難が生じ、それのせいで書く事にも困難が生じる、読字障害-ディスレクシア-。
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