私の本音は、あなたの為に。
前とは反対で、五十嵐が私とハグをしながら涙を流していた。


「あーやばいよ、俺めっちゃ男っぽくないじゃん」


声を震わせながら、そう言う五十嵐。


「うん。高校生にも見えないよ」


先程の私の一言で、一気に涙腺が崩壊してしまったらしい五十嵐は、身体だけ大きくなった子供の様だった。


「もしかしたら、私の方が男っぽいかもね」


「…いや、それは無い」


既に30秒以上ハグをしていても、五十嵐は私から離れようとはしなかった。



「……俺、安藤が男とか女とかそういうの関係なく、…安藤の事、好きだよ」



そして、不意に訪れたその言葉。


「…『好きみたい』じゃなくて?」


既に背伸びをするのに疲れた私は、彼の肩を見ながらそう尋ねる。


「うん」


私の背中から両腕を五十嵐は、私の肩を掴んで向き直った。


彼の目は、真っ赤に充血している。


しかも、未だに私以外の所に目を向けない。


「俺、安藤の事が好き」


「…私も」




そこまでは、本当に良いムードだった。


本当に。



けれど、その後に言い放った五十嵐のある言葉が、私を窮地に立たせる事になる。
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