私の本音は、あなたの為に。
私の中では、“優希”と“勇也”が激しく入れ替わっていた。


口調は“優希”を何とか保っているけれど、態度や目つきは兄そのものだ。


「だって、俺らもう高校生だよ?」


先程まで私に抱き締められて子供の様に泣いていたはずなのに、急に何を言い出すのだろうか。


まだ目は真っ赤に充血しているし、未だに字に対する恐怖は拭えていないはずなのに。


「私、五十嵐に頼まれても、絶対にそれだけはやらないから!」


私は、両手を胸の前でひらひらさせ、“何も言わないで”というアピールをした。


「…安藤さん、お言葉ですけど」


私の必死な拒否の仕方に、若干呆れ顔を浮かべた五十嵐が口を開きかけたその時。


「いやー、疲れた疲れた!さっき、ようやく佐々木が私に謝ったから解放してあげたけどさ。ついさっきだよ!?何分間言い争ってたんだろ、私達…。疲れたわもう……」


突然図書室のドアが開き、手をパンパンと叩きながら花恋が姿を現した。


「あいつさ、全然反省の色見せないから。ねえ2人共、私が体育館裏でどれほど苦戦したか分かる!?しかも体育館裏だよ?暑いし蚊は居るし…んもう、って…えっ?」


いつもは聞かない様な乱暴な口調が、彼女の口から流れ出る。
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