私の本音は、あなたの為に。
それに驚き、手を目の前に掲げて五十嵐から半歩後ずさった格好のまま固まっている私と、そんな私に近付こうとして固まった五十嵐の姿を見て、花恋は何か勘違いした様で。


「あっ……ごめんなさい、出直します」


くるりと背を向け、此処から出ていこうとする彼女を止めたのは。


「あー宮園!待って、戻って来て」


他でもない、五十嵐だった。


「?」


花恋は、ゆっくりと振り返ってそろりそろりとこちらヘ向かいながら、一言。


「えっ?…だって2人共、お取り込み中でしょ、ねえ優希?」


何故か、私に同意を求めてきた。


それは、ハグをしていた事を言っているのだろうか。


けれど、あの一件は五十嵐の恐ろしい一言によって打ち切られたはずだし、そもそも彼女はあの場面を見ていないはずだ。


「えっ?…いや、別に」


私は、ふるふると首を振った。


「あのさ。俺、宮園に聞きたい事があって」


周りの字を見るのがまだ怖いのか、目の周りを両手で覆った五十嵐が、それかけた話を唐突に元に戻した。


「ん?何、怜音?」


それにしても、ここ暑くない?冷房…って、ついてるし、と花恋は独り言を漏らしながら五十嵐の方を見た。


「えっ、何やってるの?」


と、五十嵐の両手の位置に苦笑しながら。
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