私の本音は、あなたの為に。
「…安藤が男っぽくなる事、どう思う?」


五十嵐は、花恋の言葉を無視して質問した。


「ちょっ!」


(いや、唐突過ぎでしょ)


私は、思わず声を上げてしまう。


「…えっ、それ急に聞く?…ていうか、優希の前で聞く?」


案の定、花恋も同じ事を思った様で。


怪訝な顔をして、五十嵐の質問の真意を探ろうとしているけれど。


「いいから、答えて」


彼の強い口調に、跳ね除けられてしまった。


「え……」


花恋は、困惑した様に私と五十嵐を交互に見詰め、ゆっくりと口を開いた。


「……正直、私には分からない。優希が出した結論だから、私は優希を応援するけど、でも……」


「『でも……』?」


続く言葉を聞こうと、オウム返しに尋ねる五十嵐。


「…いや、何でもない。でも、何でこんな事を聞くの?」


自分のリュックを勢い良く机の上に置きながら、花恋は五十嵐に尋ねた。


「今ね、安藤に、安藤のお母さんにきちんと自分の正体を言ってみたら?って話をしててね」


(何よ五十嵐、私の秘密を知ったからって…)


私は、軽々しくそう伝える五十嵐を、“勇也”として睨みつけた。


「それを言ったら、安藤が思いの外嫌がって…。宮園、安藤と仲良いだろ?だから意見を聞こうかと…」


「えっ、…いや、私は……」


珍しく、花恋が言い淀んだ。
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