私の本音は、あなたの為に。
どちらにせよ、最終決定権は優希にあるよ、と、花恋も足を組みながら五十嵐に同意する。


「そっか…」


(でも、ママの反応が……)


また黙ってしまった私に、花恋がにっこりと笑い掛けた。


「別に、優希1人でカミングアウトしてなんて、誰も言ってないよ」


「えっ?」


私は、驚いて花恋を見やる。


「私達も、出来る所まで協力するよ?…現地には行けないと思うけど、優希がカミングアウトする直前まで、電話とかメールとかする分には問題ないでしょ?」


その素晴らしい提案を聞いた五十嵐が、慌てて自分を指差す。


「“私達”って、俺も入ってんの?」


「えっ、言い出しっぺは誰よ」


佐々木を問い詰めた時と同じムードで、五十嵐に笑顔で尋ねた花恋。


口角は上がっているのに目が笑っていない所が、いかにも怖い。


「…俺です、はい」


おお怖い、と両腕を擦る振りをしながら、五十嵐はあっさりと首を引っ込め。


「俺も宮園もやる気満々だけど…お前は?」


そう、話題を振ってきた。


「私、は……」


(夏休み、1回で良いから家で“優希”として過ごしてみたいかも)


今まで押さえ込んできた感情が、再び蘇る。


(ママに“優希”って呼ばれるの、どんな気分だろうな…)


期待と不安が入り混じる。
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