私の本音は、あなたの為に。
記憶に無い自分の娘、“優希”。


先程まで明らかに“勇也”だった少年が、急に自分は女で、“勇也”は既に死んでいて、名前は“優希”で、“勇也”の妹だと言い始めているのだ、仕方は無い。


ママがショックになるのは分かるけれど、でも。


私は、“優希”だから。


ずっと“勇也”として生きてきたけれど。


兄の言っていた、“優しい嘘”をつき続けるのが、辛くなってしまったから。


(お願い、ママ)


『うっ……っ…!』


イヤホンからは、花恋の嗚咽が聞こえる。


『やば、心に染みる……っ』


言い出しっぺの五十嵐の、絞り出す様な声が聞こえる。




(ママ、ママ、お願いだから)


(私は頑張ったの、私を認めて)


未だに仏壇に飾られていない、兄の写真。


未だに掃除され続けている、兄の部屋。


花恋からも、五十嵐からも、入院中の大ちゃんからも。


私は、応援されている。




(お願い、私を……見て)




私はすっと息を吸い、驚きを隠し切れていないママを見た。





「ママ、お願いだから目を覚まして!私は、お兄ちゃんじゃない!優希なの!……私を、見て!」









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