私の本音は、あなたの為に。
そう。


もう、ママは私の事を“勇也”として認識していない。


きちんと、実の娘の“優希”として認識してくれているのだ。



実際、ここまで来るのは大変だった。


私がカミングアウトした後、当たり前の様に私に向かって怒ったママ。


けれど、私はそれにひるまず、懸命に兄と私について語り続けた。


電話越しに私とママのやり取りを聞いている2人は結局感情移入して号泣し、応援の言葉も最後には貰えなかったけれど。


今は、そんな事は関係無い。


とにかく、私はママに思い出して貰える様、その日以降も日夜問わずにママに説明し続けた。


昔のアルバムを見せたり、私が女子の格好をしていた写真を見せたり、兄についての思い出を語ったり。


混乱していたママに、


「あなたは私が産んだ子じゃないのよ」


とまで言われ、かなり落ち込んだ日もあったり。


何を言っても“優希”だと認められなくて、“勇也”に戻る事を真剣に考えた事もあった。


けれど、そんな時に何度も相談に乗ってくれたのは、やはりあの2人で。


最も、五十嵐からは、


「失敗して俺と30秒ハグするのと、成功してやっぱり俺と30秒ハグするの、どっちが良いよ?」


と、謎のアドバイスしか貰えなかったけれど。



そんな2人から、何度も力を貰って。
< 308 / 309 >

この作品をシェア

pagetop