私の本音は、あなたの為に。
私の間の抜けた言葉を聞き、五十嵐は笑った。


「このご時世、ケータイ持ってないの?」


意地悪く微笑む五十嵐は、自分のポケットからスマートフォンを取り出し、私に向かって掲げて見せた。


「い、いや、持ってる!」


私も自分のバッグからスマートフォンを取り出して見せた。



紅高校は、ケータイは持って来ても良い。


学校に入ったら使ってはいけないけれど、放課後からは学校内に居ても使っても良い事になっている。


だから今は、自由にケータイを使っていても良いのだ。



「連絡先、交換しない?…ほら、図書委員同士知っておいた方がいいと思って」


「いいよ」


私と五十嵐はお互いのメールアドレスと電話番号を交換した。


メッセージアプリの中に、


『五十嵐 怜音』


という名前が追加される。


「んー……」


五十嵐が悩み悩み、私にある文章を送ってきた。


『これから、宜しくね』


五十嵐はフリック入力が苦手なのか、かなり時間をかけて私にメールを送信していて。


そっと五十嵐の手元を覗き見ると、1つ1つの字の大きさがかなり大きく設定されているのが分かった。


(五十嵐、視力両目ともAじゃないの…?)


微かな疑問を胸に抱いた私は、それを彼に問うこと無く、スマートフォンをポケットにしまった。
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