私の本音は、あなたの為に。
(だから、ママが居ない今だけ泣かせて下さい)


(明日からは、もっと上手にお兄ちゃんの演技をします)


もはや誰にその願いを言っているのかも分からないまま、私は心の中でそう言い続ける。


拭いても拭いても止まらない涙を拭い、私は立ち上がってハンバーグを電子レンジで温める。


ハンバーグを温める間に、私はママの置き手紙を手に取り、くしゃくしゃに丸めてゴミ箱に捨てた。



もう、自分がどんな感情でそんな事をしているのかも分からなくて。


ストレスが溜まりすぎているのかも分からない。


それでも、私は助けを求められるのだろうか。


花恋にはずっと無理を言い続け、自分の中に感情を押し込め。


ママにはもちろん、本音を言えないまま。


(何で、こんな事をしないといけないの…)


もう、全てが分からない。


私の周りは、真っ暗だ。


もう、この暗闇から出る術など無いのかもしれない。



それからしばらくして、私は温まったハンバーグとご飯で1人きりの夕飯を食べた。


ハンバーグの味は、しなかった。


ただただ、温かいだけ。


「ママ……」


私の呟きは、誰の耳にも拾われる事無く室内に響き、そして消えた。
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