私の本音は、あなたの為に。
そしてこの後、私がお風呂場でも泣いた事は言うまでもない。


ママからの置き手紙を見た時と同じ様に、私は何故泣いているのかも分からないまま、涙を流し続けた。


声を押し殺して泣いたはずなのに何故か少しだけ声は枯れた。


上を向いて何度も涙を堪えていたはずなのに目は充血していて、お風呂から上がった後も大変だった。



そんな事があった後だから、今も目が充血して赤く腫れ、声が少し枯れている事は当たり前なわけで。


(本当の理由を知られないようにしないと…)


私は心の中で、この件について聞かれた時の回避方法を必死で考えながら学校へ向かった。


それが例え、花恋であっても。


五十嵐なんて、もっての外。


まだ、五十嵐の口が軽いか軽くないかなんて分からないから。


安易に口を滑らせるのは、もう自殺行為としか思えない。


(何て言おうかな…)


朝一番から、私の心は憂鬱だった。



学校に着いた私は、目を伏せて自分の席に座る。


今日ばかりは、存在を消したかった。


だから、誰にも何も言われない様に最大限に注意を払っていたのに。


「安藤、おっはよー!」


私の考えは、能天気な男子の一声で何処かへ行ってしまった。


「……おはよう」


五十嵐は、空気を読んでいるのか読んでいないのか、颯爽と自分の席に座ってこちらを見てきた。
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