私の本音は、あなたの為に。
今日は4月10日。


高校に入学してから、2日目だ。


紅月中学校からの入学者は多いけれど、もちろん他の中学校から入学した人だって大勢いる。


ママの言った通り、少しだけ学校生活が不安だ。


「でも、勇也なら大丈夫よ。中学校でも、新しい環境にすぐに慣れたじゃないの」


ママの言葉に、私は顔を上げた。


「高校生活、沢山楽しんでちょうだいね。……勇也、彼女さんとか作ったら良いわね」


「…うん」


最初の言葉はすぐに頷ける。


けれど、次の言葉は…。


(私は、男じゃない)


(違うのに、ママ)


心の中で、必死にママに訴える。


もしも作るとしたら、それは“彼女”ではなく、“彼氏”のはずなのに。



私はご飯をかき集めて口に入れ、味噌汁で流し込む。


正面に座るママの顔を直視出来ずに、少しだけ残っている野菜を口に運んだ。



お母さんの勘違いは、どんどんヒートアップしてきている。


いずれ、こうなる事は分かっていた。


中学校生活の頃は嘘を積み重ね、三者面談では恥をかいて。


その頃から、薄々この行為が危険だという事は分かってきていた。


家の中でだけ、男になる事が。


けれど、もう後戻りは出来なくて。


今やるべき事は、ただ1つ。


“私が男になっているという事は、高校では絶対にばれてはいけない”


いじめの標的にだけはされたくないし、それによってママを困らせる様な事もしたくはない。


私は、ママの自慢の息子で居なければいけないから。
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