私の本音は、あなたの為に。
いつも通りの格好のはずなのに、何故ママは眉をひそめているのだろう。


「ママ、いつも私はこういう格好だよ」


私は、何とかママに訴える。


「そうだった?…まあいいわ、今日の買い物で洋服を買ってあげるから」


ママは未だに首をひねりながら靴を履き、玄関の扉を開けた。


「そうねえ、何の洋服がいいかしら…。やっぱり、男っぽい格好良い服がいいかしらね」


私が外に出たのを確認して玄関の鍵を閉めたママは、1人で呟いてにこにこ頷いている。


(えっ、私が男?)


私は、ママの言動に驚きながらもママの後をついて行った。



ショッピングモールに着いたママが真っ先に向かったのは、サッカー専門店だった。


「ちょっとママ、何処に行くの?私が行きたいのは3階だってば!」


ショッピングモールに着く前からママの様子は若干おかしかったけれど、ここに着いてからは様子がもっと酷くなっている。


私は、新しい靴と格好良い洋服が欲しかった。


それなのに、ママは何故サッカー専門店に行くのだろうか。



「私、サッカーなんて分かんないよ!お兄ちゃんがサッカーの事知ってるんだよ!」


私はずんずん進んで行くママの目の前に立ちはだかり、必死でそう言う。


「私はお兄ちゃんじゃないよ。さっきからどうしたの、ママ?」


「えっ…?」
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