私の本音は、あなたの為に。
(私みたいに、隠している事がないんだな…)


その瞳を見て、私はそう感じた。


「じゃあ次、安藤さん」


玉村先生に言われ、私は立ち上がる。


「安藤 優、希です。…これから1年間、宜しくお願いします」


家での癖で、“勇也”と言いそうになり、慌ててしまった。


けれど、私の心の焦りは誰にも気付かれなかったようだ。



その後は順々に自己紹介が進み、次に委員会と係決めに移った。


「…じゃあ、今から委員会を決めたいと思います」


玉村先生が、黒板に委員会の名前を書きながらそう言う。


委員会は、図書、美化、保健、報道、そして学級の5つがある。


私は、どの委員会に入るかは決めていた。


それは、図書委員会。


けれど、本を読むのは苦手で、どちらかというと漫画の方が好きだ。


何故図書委員会なのか、それには理由があった。



勇也が、読書が好きだったから。


ママは、私の事を勇也だと思っている。


中学校は図書委員会に入っていた勇也が、高校になって委員会に入らなかったと知ったら、ママは悲しむと思うから。


もちろん、私は勇也ではない。


けれど、もう私には希望はないから。
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