私の本音は、あなたの為に。
『体育祭、俺これやるから』


いつかの体育祭の競技の話し合いの時だ。


『えっ、でも…』


自分がやりたかった競技を山本に取られ、ある女子がおずおずと手を挙げる。


『あぁ"?何か文句あんのかよ』


途端に、黙って聞いていた山村が口を挟んだ。


『俺らが決めるんだよ、お前は黙っとけっての』


続いて山下がそう言い放つ。


手を挙げていた女子は、いつの間にか


『いいよ、山本で』


と言っていた。


いや、彼等に言わされていた。



そういう男子達に言い返した私と花恋は、先生にしてみたら凄いのかもしれない。


花恋は、一呼吸置いて話を続けた。


「今日は、いつもよりもからかう内容が酷かったんです」


「酷いって、どんな?」


先生に後押しされ、ためらっていた花恋はゆっくりと口を開いた。


私は、その事について話せないだろうと分かっていたから。


兄の事を侮辱された私がその事を口にするのがどれほど辛いか、彼女は分かっている。


「その…優希は髪の毛が短いから男っぽいとか……優希のお兄ちゃんが、亡くなったのは優希のせいだとか…」


私は、唇を噛み締めて俯いていた。


隣に座る花恋が、私の手を握ってくれるのが分かる。


私も、そっと握り返した。


「なっ……」


先生も、からかいの内容があまりにも残酷すぎる事に言葉を失ってしまって。
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