私の本音は、あなたの為に。
けれどこれでまた嘘をついたら、また喧嘩をしてしまうかもしれない。


(どうしよう……)



何も言えなくなった私を見て、花恋は首を傾げた。


「どうしたの、優希?……言うのが怖くても、共有する事で心が軽くなる事って、あるんじゃないかな」


「……」


「優希、聞かせて。何か、隠してる事あるんでしょ?」


私は歩くスピードを落とし、俯いた。


これから、ママとの関係を話すだなんて考えられない。


けれど、花恋の言っている事も一理ある。



「私ね………」


自分の心と闘った結果、私はゆっくりと口を開いた。


「うん」


花恋は、促す様に私に微笑みを向けてくる。


「その………」


私は息を吐き、次の一言で言い切った。


「ママに、忘れられたんだ」


「ん!?」


花恋は目をぱちくりさせ、瞬きを繰り返している。


私は、そんな花恋を見て笑みを浮かべた。


もっと深刻な表情を浮かべると思ったけれど、面白い反応をしてくれたから私の気も楽になる。


「ちょっと待って、優希が優希のお母さんに忘れられてるって事?それって…?」


私の短すぎる説明だけでは理解が出来なかったのか、花恋の頭上にははてなマークが何個も浮かんでいる。
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