私の本音は、あなたの為に。
「私が、肩まで髪の毛を切ったって言ったでしょ?」


「うん」


「短くなった髪型で家に帰った時、ママに……『勇也、おかえり』って言われたの」


「っ…」


次の彼女の反応は、先程とは打って変わって深刻な表情を浮かべていた。


「で、肩までの長さだと長いって言われて…。結局、ボブヘアーになったんだ」


「髪の毛は……女の命なのに…!」


耳にタコが出来てしまう程聞いたその言葉。


今では、その言葉が苦しかった。


私は女なのに、家では女にはなれない。


「ママに、私は“勇也”って思われていて…。それからずっと、家の中ではお兄ちゃんの演技をしているの……」


「えっ……」


花恋は下唇を噛み、先程の私よりも深く俯いた。


「何、それ……」


花恋の次なる言葉が、私の耳に入ってきた。


「優希、お母さんの前では優希のお兄ちゃんになってるの…?だから、髪の毛も男みたいに短く切って、さっきみたいに口調も男っぽくなったの…?」


私の言葉を確認した花恋は勢い良く顔を上げ、私の目を見据えた。


「優希のお母さん、病気とかではなくて…?」


「それは…分からないんだ。一時期ドッキリだと思ったんだけど、ママの反応を見てると、本当に私の事をお兄ちゃんって思っているみたい」
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