私の本音は、あなたの為に。
そのページは、そんなに分からない内容だらけだっただろうか。


「何だよ、これ……」


私が背後から覗き込んでいる事にも気が付かない彼は、そっと書かれた文字を指でなぞって大きくため息をついた。


その直後、五十嵐が国語の教科書をリュックにしまったので、私はそっと自分の席に座った。



(次は、社会か…)


先程よりも元気になった私が、いつも通り社会の準備をしていると。


「あれ?安藤じゃん、もう戻って来たの?」


隣から、間抜けな声が聞こえてきた。


「うん」


リュックサックをガサゴソと掻き回しながらそう言うと、


「安藤が居なかったから、国語の時間大変だったんだよー」


と、かなりふてくされた様子でそう言ってきた。


不思議に思った私がその理由を聞くと、


「その…字が小さくて教科書が読めなくて、恥をかいたんだ」


と、思い出すのも嫌そうに眉間にしわを寄せていた。


何があったのか詳しくは分からないけれど、五十嵐が私の助けを必要としている事は分かった。


昨日、私が五十嵐と約束した様に。


「分かった、ごめんって」


私は笑いながら謝り、五十嵐はそんな私を見て軽く笑った。
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