私の本音は、あなたの為に。
案の定、社会の授業でも、五十嵐は全くと言っても過言ではない程教科書の字を読めていなかった。
「…なので、第2次世界大戦後、日本はヤルタ会談によって決定されたポツダム宣言を受け入れる事になるのです」
先生の言っている言葉が、物の見事に私の左耳から右耳へとすり抜けて行く。
それもそのはず、私は授業が始まってからずっと、付きっきりで五十嵐に内容を教えているからだ。
「ここ、何て書くの?」
先生が黒板に背を向けた瞬間、五十嵐がプリントを差し出してくる。
「ヤルタ会談って、黒板に書いてあるよ」
「だから、読めないんだって!」
小声で五十嵐が私に言い返してくる。
「でも…、かなり大きい字だと思うけど?」
「え…?」
その言葉を聞いて初めて、五十嵐は黒板を凝視し始めた。
「…どこら辺?」
「上の方。大きく書いてあるじゃん、ヤルタ会談って」
黒板の上の方に、先生が大きく“ヤルタ会談”と書いていた。
意外と大きなその字は、誰だって読めるはずなのに。
「……あれ、かな?…あの大きいやつ?」
五十嵐は目を細め、ようやくその存在を認識したようで。
「そう。ここに書いて」
私は、五十嵐に差し出されたプリントを押し返し、書くべき場所をトントンと手で示した。
「…なので、第2次世界大戦後、日本はヤルタ会談によって決定されたポツダム宣言を受け入れる事になるのです」
先生の言っている言葉が、物の見事に私の左耳から右耳へとすり抜けて行く。
それもそのはず、私は授業が始まってからずっと、付きっきりで五十嵐に内容を教えているからだ。
「ここ、何て書くの?」
先生が黒板に背を向けた瞬間、五十嵐がプリントを差し出してくる。
「ヤルタ会談って、黒板に書いてあるよ」
「だから、読めないんだって!」
小声で五十嵐が私に言い返してくる。
「でも…、かなり大きい字だと思うけど?」
「え…?」
その言葉を聞いて初めて、五十嵐は黒板を凝視し始めた。
「…どこら辺?」
「上の方。大きく書いてあるじゃん、ヤルタ会談って」
黒板の上の方に、先生が大きく“ヤルタ会談”と書いていた。
意外と大きなその字は、誰だって読めるはずなのに。
「……あれ、かな?…あの大きいやつ?」
五十嵐は目を細め、ようやくその存在を認識したようで。
「そう。ここに書いて」
私は、五十嵐に差し出されたプリントを押し返し、書くべき場所をトントンと手で示した。