遅すぎた初恋
「はあああ⁈」と私が声を上げてしまった。
このお嬢様は今の状況が分かっているのか?

隆俊様は仕方なく、後部座席に乗り込んで、ゆかりさんに自分の隣に来るように促した。

私は、ゆかり様が後部座席に座られたのを確認して車を出した。
大の男二人が小娘相手に何をやっているのだろう。

「で、貴方は私の事が好きだと仰るの?」
とゆかり様から隆俊様に話しを切り出した。

「ああそうだ、俺は君が好きだ。さっきも言ったが、こんなのは初めてなんだ。君に自分を見透かされて、説教されて、断られて、逃げられて、それが、あまりにも強烈で興奮したんだ。だから、その場で君のご両親に話を進めて欲しいって言った。君と居るとそれだけで、日々が楽しいんじゃないかと思うんだ。自分が死ぬその日まで、君といたいと思ったんだ。」

「じゃあ、なんでそれを早く言わないの?」

「そんな事、言える訳ないだろ。三十過ぎた、いい大人が年甲斐もなく一回りも下の娘に。それに言葉よりも先に、手が出そうになるのを必死に抑えてて…。気持ち悪がられて、嫌われたらって思うと、それこそ恐怖だ。」

「でも、毎日押しかけて来る事自体が恐怖よね。榊さんもそう思わない?」

「……。」頼むから、私に話しを振らないで下さい。確かにゆかり様の言い分が正しくとも、面と向かって上司に、頭可笑しいとは言えんだろ!「はあ。」と曖昧にしか答えられない。
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