遅すぎた初恋
「それに貴方は十分恵まれた環境に生きているのに、どこか投げやりに粛々とこなしている風に見えたから、なんか悔しくなって、捲し立ててやったわ。
毎日花を携えて来てくれるのが、嬉しかったわ。貴方が来ない日は寂しかったわ。でも、来た時は色々話したいわ、貴方の事を知りたいわ。ただ見つめられるだけでは、つまらないわ。駄目かしら?」

隆俊様が、固まっている。面白い。ゆかり様の予期せぬ行動に完全に心を奪われている。

すごいな、ゆかり様は。こんな融通の利かない人を捕まえて、上手く手なづけている。

「駄目ではない。努力する。私にとっては君と同じ空間にいれるだけで幸せだし。見つめているだけで、興奮…いや、嬉しいんだ。だが、会話は重要だ。あまり他に興味を持つ事も趣味もないんでな、面白い話しは言えん。仕事の話ししか出来ないかもしれんが努力しよう。」
と、どこかつまらない人間なのだと自嘲気味に返事をしている。

「それで十分だわ。」とゆかり様が優しく微笑んでいる。

その様子がなんとも魅力的で、ミラー越しに見入ってしまった。

ゆかり様の自宅に着くまで、三人で取り止めのない会話をしながら、送らせて頂いた。

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